41話「時のストレイシープ」


  シナリオデモ ヒリュウ改 艦内
ラミア「ラミア・ラヴレス、入ります。 ……お呼びですか、ギリアム少佐」
ギリアム「ああ。 早速だが、これを見てくれ」
ラミア(少佐が私に、ということは……)
ギリアム「つい先程、感知されたものだ」
ラミア「これは……通常転移反応? いや……」
ラミア「通常の転移ではない…… もしや、次元転移反応……!?」
ギリアム「その通り。 しかも、徐々に強まってきている」
ラミア「距離は……ここからそう遠くない。 しかし、この反応はアギュイエウスや リュケイオスのものではないようですね」
ギリアム「そう。反応の継続時間も鑑みて、 シャドウミラー以外の者による転移の可能性が高い」
ラミア「少佐には……心当たりがあるのですか?」
ギリアム「………」
ギリアム「かつて俺や君がいた世界から 転移してくるのなら……一つだけある」
ギリアム「だが、あのシステムは未完成だった。 あれでは……まだ無理だ」
ラミア「どんなシステムであれ、転移時に時間の ズレが生じてしまうことは、少佐やシャドウミラーが 証明しています」
ラミア「少佐の仰るシステムを完成させてから、 転移を行ったという可能性は?」
ギリアム「………」
ラミア「キョウスケ中尉は動けず、エクセ姉様…… エクセレン少尉も依然消息不明のままです」
ラミア「これ以上状況が悪化する前に、 早急に正体を確かめるべきでしょう」
ギリアム「そのつもりで君を呼んだ。 同行してくれるか?」
ラミア「がってん承知……!」
ラミア「ゴホン。……いえ、わかりました」
ギリアム「フッ、最後の最後で惜しかったな。 俺は個性があっていいと思うぞ、ラミア」
ラミア「……フォローありがとうございますのです」



  8PP ラミア、ギリアム出現
アクセル「レーダーに反応したのは、 やはりハガネの機体だったか。 あの後、上手く逃げおおせたらしい」
ラミア「あのアシュセイヴァー…… もしやアクセル隊長か?」
アクセル「これでエクサランスが 敵の手に落ちる可能性も出てきた。 流れが悪いな、こいつは」
ラウル「あいつらもアクセルの仲間か!?」
ギリアム「……あれが転移者か」
ラミア「やはり、シャドウミラー隊の 者ではなかったようですね。 ……状況は良くないようですが」
ギリアム「ああ」
ギリアム(はたして、あの機体に グレーデン博士とモントーヤ博士の エンジンが搭載されているかどうか……)
ギリアム(だが、今は彼らをシャドウミラーから 救わねばならない)
  通信音
ギリアム「そこの機体、聞こえるか? 私は地球連邦軍のギリアム・ イェーガー少佐だ」
ラウル「連邦軍!? なら、 アクセルの仲間じゃない……!?」
ギリアム「そうだ。 これよりそちらを援護する」
ラウル「りょ、了解! 助かります!」
ギリアム(彼はアクセル・アルマーのことを 知っている……)
アクセル「聞かせてもらった。 ヘリオス、ここで貴様に会うとは、 おれにも運が向いてきたようだ」
アクセル「エクサランスと まとめて、捕らえさせてもらう。 ……動くなよ?」
ラミア「アクセル隊長…… その命令は聞けません」
アクセル「フッ…… 相変わらず聞き分けのない人形だ。 ならば隊長などと呼ぶな」
ラミア「………」
アクセル「………」
アクセル「W17…… あの後、ベーオウルフはどうなった? 死んだ……か?」
ラミア「………」
ラミア「残念ながら、生きちゃって…… いえ、生存が確認されました」
ラミア「……ですが、重傷です。 戦列への復帰は絶望的でしょう。 再起不能……と言えます」
ギリアム(ラミア、何を……?)
ラミア「アルトアイゼンは大破…… 修復するよりも、新造した方が 早いという状態です」
アクセル「……そうか。 これでおれの憂いが一つ消えた」
アクセル「それが本当ならな、W17。  ……やはり貴様は人形だ、これがな」
ラミア「……どういうことです? アクセル隊長、私は……」
アクセル「自分で考えることだ。 理解できるわけもないが、な。 ……いくぞ」


  VSアクセル
ギリアム「お前達も あの機体の存在を知っていたか!」
アクセル「ここで貴様と エクサランスが手に入れば、 おれ達の勝ちは確定する……!」


  シャドウミラー撤退、前略
アクセル「……本当に近しい者が 戦場で倒れたならば、そんな涼しい 顔をしていられるはずもない」
アクセル「貴様の言葉を聞いた ヘリオスの態度を見ていれば、 それは明らかだ、これがな」
ギリアム「………」
アクセル「そこにいるラウルの身内を おれは間接的にとは言え…… 手にかけた」
ラウル「間接的に……だと!? お前のせいだろう! お前が……!」
アクセル「……そうだ。こうして 憎しみが生まれ、戦いが続く。 それが戦争というものだ、これがな」
ラミア「……隊長……」
アクセル「わからんだろう? W17、 貴様はそれを理解せず、口先だけで おれを欺こうとした」
アクセル「……なめるんじゃねえぞ、 人形風情が……!」
ラミア「あ……わ、私は……」
ギリアム(アクセル・アルマー…… 闘争の世界で生きる者の信念か)
   (省略、アクセル撤退)
ラミア「……少佐……私は…… やはり、ただの作り物でしか……」
ギリアム「気にするな、ラミア。 ……彼の言葉を深く受け止めることが できたなら、それでいい」
ギリアム「それが人間らしさだ。 そのことを忘れないでくれたまえ」
ギリアム「さあ、彼らと接触するぞ。 いつまでもそんなことでどうする」
ラミア「……了解です」
   通信音
ギリアム「こちらギリアムだ。 そちらの事情を聞きたい。 機体から降りてもらえるか」
ラウル「は、はい」
ラージ「ギリアム・イェーガー少佐…… でしたね。僕はラージ・モントーヤです」
ギリアム(モントーヤ……。 ならば、やはり……)
ラージ「ぶしつけだと思いますが、 一つ質問させて下さい」
ギリアム「何だ?」
ラージ「あなた方は、 本当に地球連邦軍なのですか?」
ギリアム「ああ、そうだ」
ラージ「………」
ギリアム「こちらからも 一つ質問をさせてくれ」
ギリアム「あの機体には、グレーデン博士や モントーヤ博士が作り上げた 時流エンジンが搭載されているのか?」
ラージ「!」
ラウル「ど、どうして、それを……!?」
ラージ「……あなたは何者なんです?」
ギリアム「先程も言った通り、連邦軍の ギリアム・イェーガー……しかし、 『向こう側』ではこう名乗っていた」
ギリアム「ヘリオス・オリンパスとな」
ラージ「……!!」



  エンドデモ
ラウル「……状況はだいたい理解できました」
ギリアム「にわかには 信じられないことだとは思うがな」
ラウル「それと、 あなたからの申し出についてですが…… 少しの間、俺達3人で話をさせてもらえませんか」
ギリアム「いいだろう」
ラウル「では……」
   ラウル、姿を消す
ラミア「少佐……本気なのですか?」
ギリアム「ああ。 危険ではあるが、俺達と行動を共にした方が いいだろう。彼らにとってもな」
ラミア「確かに……。 シャドウミラーとは違い、意図的に『こちら側』へ 来たわけではない……か」
ギリアム「うむ」
ラミア「少佐、時流エンジン…… あれには空間・次元転移能力が備わって いるのでしょうか?」
ギリアム「俺があれの存在を知った時点では、 あくまでも可能性の段階だった」
ラミア「……時粒子…… 時の流れでタービンを回し、エネルギーを得る。 そんなものが……」
ギリアム「あまりにも飛躍した理論だけに、 発表された当時は誰も相手をしなかった」
ラミア「少佐と……レモン様以外は、ですね?」
ギリアム「だが、俺が着目した点は 時粒子の概念とエネルギー供給方法だった」
ギリアム「転移機能に関しては システムXNの方が上……俺は時流エンジンを サブ・システムとして使えないかと考えたのだ」
ラミア「では、 時流エンジンが単体で転移機能を得るのは、 不可能だと?」
ギリアム「現時点ではな」
ラミア「しかし、転移は成功した。 そして、現状では再転移は不可能……」
ラミア「彼らが『向こう側』で接触したという アンノウンと……関係があるのでしょうか?」
ギリアム「おそらくな。 偶発的な要素が重なり、『こちら側』へ 来てしまったのだろう」
ラミア「もしや……少佐は、そのアンノウンについて 心当たりがあっちゃったり? ……ゴホン、失礼しました」
ギリアム「フッ……あっちゃったりはせんな」
ラミア「………」
ギリアム「それについては俺の方が聞きたいくらいだ。 俺が転移した後の状況は、君の方が詳しかろう?」
ラミア「……提供された映像データを見る限りでは、 生体兵器……おそらくはアインストかと思われますが、 確証はありません」
ギリアム「『向こう側』でも彼らは現れていたのか?」
ラミア「……いえ。 ですが、不可解な事象は確認されていました」
ラミア「それがアインストであったかもしれません。 ……もう確認することは出来ませんが」
ギリアム「………」
ギリアム「ともかく、 ラウル・グレーデン達が転移者である点と、 時流エンジンの転移機能に関しては伏せておいてくれ」
ラミア「わかりました。 どのような扱いにしておきますか?」
ギリアム「彼らは、俺の知人ということにしておく」
ギリアム「そして、 真実を明かすタイミングは、一任してくれ。 現状で、さらなる混乱が生じることは避けたいのでな」
ラミア(そうだな……。 事実を明かしたとは言え、我々のような異邦人は やはり受け入れられにくいはず……)
ラミア(ラウル・グレーデン達に 明確な転移の意図があったのならともかく、な)
ラミア(そして、ギリアム……ヘリオス…… 彼もまた、異邦人なのだから)
ラミア「……了解です、少佐」
ギリアム「すまない。 彼らには俺の方から言い含めておく」

ギリアム「……なるほど、それが条件か」
ラウル「はい。 俺達には、時流エンジンを悪用する気はありません。 ただ、元の世界へ戻りたいだけなんです」
ギリアム「その言葉を信じよう。ただし……」
ラージ「システムXNの情報は提供できない、と?」
ギリアム「ああ。 ……だが、君達の帰還にとって、 プラスになり得るデータは渡すつもりだ」
ラージ「本当ですか?」
ギリアム「とは言え、 元の世界へ戻れる可能性は限りなく低いぞ」
ラージ「それは……承知しています。 簡単に転移できるのなら、あなた方が そうしているはずですからね」
ギリアム「……ああ」
ラウル「ですが、俺達は諦めるつもりはありません」
ギリアム「了解した。 しばらくはヒリュウ改へ乗ってもらうことになるが、 手配が済み次第、安全な所へ……」
ラウル「それなんですが…… 俺達もシャドウミラーと戦います」
ラミア「……!」
ギリアム「その申し出はありがたいが…… 命の保障は出来んぞ」
ラウル「わかっています。 ですが、あなた方が置かれている状況を 黙って見過ごすわけにはいきません」
ギリアム「………」
ラウル「それに……シャドウミラーを倒さなければ、 俺達がいた世界にも危険が及びますから」
ギリアム「……いいのだな?」
ラウル「はい」
ギリアム「わかった。 君達の素性や、時流エンジンの可能性については 俺と彼女……ラミアの間で止めておく」
ギリアム「君達もそのつもりでいてくれ。 その方が現状では得策なのでな」
ラウル「わかりました」
ラミア(憎しみが生まれ、戦いが続く…… 人が戦う理由は……それだけですか? ……隊長)



39話へ   42話へ



戻る


inserted by FC2 system