宇宙編13話「迫りくる惨事」


  シナリオデモ ハガネ ブリーフィングルーム
ラーダ「……先程、バルトールに 封入されていた人物の身元が判明したわ」
ラーダ「名前はジジ・ルー…… ウォン重工業のエンジニアで、 ゲシュタルトの開発スタッフよ」
ブリット「じゃあ、やっぱりあの時の……」
アヤ「会ったことがあるの?」
ブリット「ええ、アビアノ基地で…… ミロンガと模擬戦をやる前に」
ギリアム「……諸君らも知っての通り、 ODEシステムは人間を生体コアとし、稼動している」
リュウセイ「そのODEシステムってのは、 いったい何なんスか?」
ブリット「ミロンガや バルトールの異常なまでの性能は、 そのシステムによるものなんですか?」
ギリアム「その通りだ。ODEシステムは、 かつてEOTI機関で研究されていた機動兵器の ネットワーク・システムを出発点とする」
テツヤ「EOTI機関…… では、今回のテロはDCとも何らかの関係が?」
ギリアム「いや…… DCでのODEシステムの開発は、 計画半ばで中止されている」
ギリアム「この件については、 レーツェルから確認を取った」
ヴィレッタ「では、DC以外の何者かが、 ODEシステムを独自に完成させたのね」
ギリアム「ああ。 そして、インスペクター事件後、 あれをウォン重工業にもたらした者がいる」
  電子音
ユルゲン「………」
エクセレン「あらん? 思ってたより人の良さそうなオジサマじゃなぁい?」
ギリアム「ヴィルヘルム・V・ユルゲン博士。 かつてEOTI機関……そして、DCに所属し、 ODEシステムを開発した人間だ」
ブリット「この男が全ての元凶か……!」
ギリアム「一概に決め付けは出来ない。 何故なら、ODEシステム開発の初期段階では、 生体コアなどという概念はなかったからな」
リュウセイ「え……?」
リョウト「ギリアム少佐、 ODEシステムについて、もう少し詳しく 教えていただけませんか?」
ギリアム「うむ。ODEシステム…… オムニ・デンドロ・エンセンファロ・システム。 その出発点は……」
ギリアム「AMNシステム…… アーマードモジュール・ネットワーク・システムだ」
ギリアム「これは1機のアーマードモジュールが得た 戦闘データを迅速かつ正確に他機へ伝達し、 さらに複数間の機体で共有するシステムだ」
ギリアム「ODEシステムは、 それをさらに発展させたもので、データの 更新・最適化に要する時間が大幅に短縮され……」
ギリアム「念動力などの特殊能力者や、 強化措置を施されたパイロットでなくとも 無人機の同時複数遠隔操作が可能となる」
エクセレン「よく舌を噛まないものねえ、少佐。 要約すると……勝手に学んで強くなるお人形ちゃんを いっぺんに操れるってこと?」
キョウスケ「なるほど、晴海で交戦した時、 こちらの手の内を読まれているように感じたが…… 学習されていたということか」
ギリアム「しかも、 入手したデータは、別の戦域で行動している 機体にまでほぼリアルタイムで伝達される」
ライ「ECCMなどで、 ネットワークをかく乱できそうなものですが……」
ギリアム「EAに対するEP策は、 様々なパターンで用意されているらしい」
イルム「ODEシステムがそんなに優秀なら、 人間を機体に乗せる必要なんてないでしょうに」
ギリアム「そう。本来のODEシステムは、 最小限の人員で多数の無人機を 制御するためのもの……」
ギリアム「つまり、人的被害を抑えるための 極めて効率的、かつ人道的な見地に立った システムだったそうだ」
リョウト「でも、 テロで使われたバルトールには……」
ギリアム「ああ、 “人と言う部品”が組み込まれている」
ギリアム「コアとなった人間は生きてはいるが、 思考・感情が奪われた状態にあり、 自律的な生物とは言えない」
アヤ「つまり……死んでいるも同然だと……」
ギリアム「システムから開放されない限りはな。 そして、いずれは消耗品として破棄、 交換されるだろう」
リュウセイ「それじゃ、 最初の目的とは正反対じゃないッスか!」
ギリアム「それこそが、 ODEシステムの抱える矛盾だったのかも知れん」
ライ「矛盾?」
ギリアム「AMNシステム、並びにODEシステムは マン・マシン・インターフェイスの追求により パイロットと機体のリンクを行うが……」
ギリアム「その際におけるパイロットの脳への負担が、 最大の問題点となっていたらしい」
ラーダ「事実、DCではODEシステム搭載機の 暴走事故が発生したそうよ」
テツヤ「それがプロジェクト中止の理由か」
アヤ「問題が多かったんですね……」
ギリアム「……バルトールとODEシステムの スペックについては、その全てが連邦軍側に 伝えられているわけではなかった」
ギリアム「おそらく、 次期主力機トライアルの責任者であった マウロ・ガット准将も……」
ギリアム「ODEシステムの最終的な仕様や、 今回のバルトール襲撃に関しては、 知らなかったと思われる」
ライ「我々は欺かれていたというわけですね…… ユルゲンやウォン重工業に」
ギリアム「ああ。そして、ODEシステムは 生体コアを導入すると言う矛盾に踏み込むことで、 新たな段階へ進もうとしているのかも知れん」
ライ「………」
リュウセイ「だけど、 人間をあんな風にしちまう量産機なんて……!」
ギリアム「生体コアは軍人…… 機動兵器のパイロットでなくても構わんようだ」
リュウセイ「!」
ギリアム「伊豆基地での戦闘で 撃墜されたバルトールの内部には ウォン重工業の一般社員……」
ギリアム「つまり、民間人が封入されていた」
ブリット「そ、そんな! じゃあ、自分達が撃墜したバルトールの中にも……」
ギリアム「いや。全てのバルトールに 生体コアが設置されているわけではなさそうだ」
ギリアム「現に、伊豆では3機のバルトールが 撃墜されたが、内2機は純然たる無人機だった」
イルム「解せないね、どうも。 生体コアにするんだったら、民間人より 軍人の方がいいのでは?」
ギリアム「バルトールは、 軍事的知識や技術のみならず、様々なデータを 集めようとしているのかも知れん」
エクセレン「様々なデータねえ。 ……恋愛遍歴とか、スリーサイズとかも 筒抜けってことかしら?」
キョウスケ「データの意味が違う」
テツヤ「無作為に人間を拉致し、 使えるデータを選別するつもりなのか?」
イルム「それじゃ、効率が悪い。 人間の拉致そのものが目的なら、軍事基地より 民間施設を襲った方がいいのはわかりますが……」
イルム「そもそも民間人のデータを集めて、 何をしようってんですかね?」
ギリアム「それは……まだ不明だ」
ギリアム「しかし、確実なのは…… 拉致された人間は、遅かれ早かれバルトールの 生体コアにされる可能性が高いということだ」
ブリット「……!」
   開閉音
カイ「艦長、ギリアム。 大阪の連邦大学がバルトールに襲撃されたぞ」
テツヤ「!」
ギリアム「また人間が拉致されたのですか?」
カイ「ああ……。 バルトールは友軍の追撃を振り払い、 逃亡したそうだ」
ギリアム「連邦大学と言えば、 極東地区でも五指に入る優秀な大学…… 効率を上げにかかったか?」
カイ「他にも、バルトールの襲撃を受けた基地や 民間施設がいくつかある」
カイ「また、月やコロニーにもバルトールが現れたらしい」
アヤ「宇宙にも……!?」
リュウセイ「あいつら、いったいどこから来て、 どこへ消えやがるんだ……!?」
ギリアム「宇宙にもバルトールが現れたという点が 引っ掛かるが、可能性が高いのは 中国・大連地区にあるウォン重工業の本社……」
ブリット「では、拉致された人達…… クスハ達もそこに?」
ギリアム「それを調べるためにも、 手掛かりを得るためにも…… 艦長、ハガネを大連へ向かわせてくれ」
テツヤ「了解です。 直ちにケネス少将へ上申します」
ギリアム「カイ少佐、宇宙軍の状況は?」
カイ「こちらと同じく、混乱しているようだ」
ギリアム「なら、 臨機応変に動ける部隊は少ないか……」
カイ「どうしようと言うのだ?」
ギリアム「敵の拠点が宇宙にもあるかどうか 調べさせたいのです」
カイ「なら、ヒリュウを動かすか?」
ギリアム「いえ。 レーツェルに連絡し、宇宙へ上がってもらいます」
カイ「その方がいいか。 独自に動ける彼らの方が、融通が利くだろうしな」
テツヤ「では、パイロット各員は いつでも出撃できるようにしておいてくれ。 どこでバルトールと接触するかわからんからな」
ヴィレッタ「了解」
   開閉音
ブリット(待っていてくれ、みんな……。 俺たちがすぐに行く)
リュウセイ(ラトゥーニ、アラド、ゼオラ、 ラミア少尉、クスハ……無事でいてくれよ……!)


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