8話「悩める守人」



  シナリオデモ クロガネ艦長室
レーツェル「……ツェントル・プロジェクト?」
ギリアム(通信)「ほぼ同時期にカイ少佐やカザハラ所長から 問い合わせがあったのでな……他の案件と並行して 調査を進めている」
ギリアム「ただ、連邦軍内のプロジェクト…… ダブルA扱いだけに少々探りが入れづらい」
ギリアム「さらにメンバーの大半が EOTI機関やDC、イスルギ重工、 マオ・インダストリーとは関係の薄い者達のようでな」
ゼンガー「情報が入りにくいということか」
ギリアム「ああ」
ゼンガー「地獄耳のお前らしくない話だな」
ギリアム「煙たがられているのさ、色々と」
レーツェル「EOTI機関やDC、イスルギと 何らかの縁があるなら、こちらにも噂ぐらいは 聞こえてきそうだが……」
レーツェル「提供できる情報はない、すまん」
ギリアム「いや、構わんさ」
レーツェル「だが、 そちらでインジリスク事件の事件関係者の身柄を 確保しているのだろう?」
ギリアム「ああ。 ドナ・ギャラガー……現在、事情聴取中だ」
レーツェル「ツェントル・プロジェクト側からの反応は?」
ギリアム「ウェンディゴの残骸は 全て回収していったが……ドナの身柄の 引き渡し要求は二、三度あったきりだ」
レーツェル「……切り捨てられたか」
ギリアム「そのようだ。 ドナ・ギャラガー自身もツェントル・プロジェクトの 全貌を知っているわけではなさそうだからな」
レーツェル「ふむ……」
ギリアム「ただ、彼女は気になる供述を いくつかしている。ツェントル・プロジェクトが アースクレイドルの事後処理を行っているなど……な」
ゼンガー「何? 確か、それは連邦軍の特務隊が担当したと……」
ギリアム「だが、どこの部隊なのか、 具体的に何をしていたのか……詳細な報告はない」
ギリアム「それに…… 現状、ソフィア・ネート博士はアースクレイドル絡みの 案件から外された状態となっている」
ゼンガー「……」
ギリアム「ツェントル・プロジェクトに関しては ドナ・ギャラガーの事情聴取を続けつつ、 先方の出方を見るしかない」
レーツェル「こちらでも何か情報が入ったら、連絡する」
ギリアム「頼む」
レーツェル「他には?」
ギリアム「スカルヘッドという名称に 聞き覚えがあるか?」
レーツェル「ああ。 かつてEOTI特別審議会が秘密裏に 建造させていたという宇宙プラントだな」
レーツェル「DC戦争前後、 DCやコロニー統合軍がその占拠を目論み、 捜索したが、ついぞ発見できなかった」
ギリアム「ああ。 連邦軍ですら、その全貌を掴むことが出来なかった 幻のプラントなのだが……」
ギリアム「インスペクター事件後、発見された」
レーツェル「本当か?」
ギリアム「ああ。インスペクターが占拠し、 自軍のプラントとして利用していたらしい」
ゼンガー「皮肉な話だな。 地球人が血眼になって探していた物を 異星人に発見され、使われるとは」
ギリアム「これは俺の推測だが…… EOT特別審議会とインスペクター側で 何らかの裏取引があったのかも知れん」
ゼンガー「南極事件の時のようにか?」
ギリアム「うむ。 彼らはDC戦争前から極秘裏に接触し、 交渉を行っていた」
ギリアム「そして、スカルヘッドは EOT特別審議会がインスペクターのために 建造したものだという可能性もある」
ゼンガー「敵の橋頭堡を わざわざ作ってやったというのか……」
ギリアム「インスペクターへの 忠誠の証だったのかも知れんな」
ゼンガー「……」
ギリアム「とにかく、インスペクターの指揮官 ウェンドロは、スカルヘッドの存在とその位置を事前に知っていたと思われる」
ギリアム「だが、あれは前の大戦で アインストとの戦闘で損傷し、放棄された」
ギリアム「その後、連邦軍が発見し…… 現在はイスルギ重工とウォン重工業が 修復作業を行っている」
レーツェル「イージス計画の一環でというわけか。 それで、そのスカルヘッドが……?」
ギリアム「一週間前、 広範囲ステルスシェードの耐久テストを 行ったそうなのだが……」
ギリアム「期日を3日過ぎても シェードが展開されたままになっている」
レーツェル「何の連絡もなしでか?」
ギリアム「いや…… 事前にテスト期間を延長するという 報告はあったそうだ」
レーツェル「ふむ……」
ギリアム「事故の類ではなく、 連絡が取れないわけでもないから、参謀本部の 人間は特に疑問を持っていないが……」
ギリアム「俺は気になる。 スカルヘッド自体が曰く付きの物だからな」
ギリアム「それに、イスルギが絡んでいる。 修復作業以外のことをやっているかも知れん」
レーツェル「否定は出来んな、 その上、ノイエDCの残党に占拠されでもし、 ステルスシェードを展開したまま移動されたら……」
レーツェル「スカルヘッドは 発見が困難な敵戦力拠点になりかねん」
ギリアム「ああ。場合によっては、 お前達に調査を依頼することになる」
レーツェル「承知した。 ……ところで、例の転移反応については?」
ギリアム「まだ何とも言えん」
ゼンガー「転移反応?」
ギリアム「インスペクター事件の終盤…… 俺達がシュテルン・ノイレジセイアを倒し、 この世界へ戻ってきた後……」
ギリアム「月軌道外宙域で、 大規模な空間転移反応が感知されたようなのだ」
ゼンガー「……!」
ギリアム「俺の所にその報告書が回ってきたのは、 つい最近でな」
ゼンガー「いったい何が転移してきたのだ?」
ギリアム「それはまだわからん。 該当宙域に偵察機が送り込まれたそうだが、 今の所は何も見つかっていない」
レーツェル「とは言え、 ESウェーブは感知されたのだろう?」
ギリアム「ああ。 ホワイトスター出現時の物より小さいが…… 波紋は既に消えてしまっているようだ」
レーツェル「妙だな」
ギリアム「ああ。エアロゲイターやインスペクター、 シャドウミラーと言えど、転移出現時の ESウェーブを完全に消すことは出来ん……」
ギリアム「故に誤感知だと考えている者が多いのだが、 俺は楽観視できなくてな」
レーツェル「いずれにせよ、 こちらで手伝えることがあったら、連絡してくれ」
ギリアム「了解した。 ラウル達の件は引き続きそちらに任せる。 ……では、またな」
  通信切断
ゼンガー「いつ休んでいるのか、わからん男だな」
レーツェル「働いていないと 気が済まない性分なのさ。 人のことは言えんがね」



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